今月の特集曲

あらすじ
季節:4月
作者:世阿弥
登場人物
前シテ 老翁
後シテ 養老の山神
ツレ 若者
ワキ 勅使
ワキツレ 従者
アイ 土地の者


美濃の国(今の岐阜県)の養老の滝の付近に薬の水が湧き出たという報告があったので、雄略天皇の命を受け、検分のために勅使が遣わされた。勅使は滝のほとりで、老人と若者のきこりに出会う。若者は毎日山で薪を取って父母を養っていたが、ある日のこと、山道で疲れを覚えたので泉の水を飲んだところ、まるで仙界の薬の水のように気分が爽快になった。またその水を汲んで帰り、父母に飲ませたところ、心が勇み、若々しくなったので、この水のことを“養老の水”と名付けた、と勅使に話した。2人は勅使を滝に案内し、霊泉をほめ、他の霊水の例を挙げながら、この薬の水の徳をたたえ、泉の水を帝に捧げた。勅使が感激して帰京しようとすると、天から花が降り、美しい音楽が聞こえてきた。(中入)
そこへ土地の者が来て、滝のいわれを語り、滝に水を飲んで若返りの様子を勅使に見せる。やがて養老の山神が現われ、「神と仏は水と波のように一体であり、ともに衆生を救おうとのご誓願なのである。時として神として現われ、また仏として現われる。」と述べ、峰の嵐や谷川の音を音楽に颯爽と舞を舞い、平和な御世を祝福して天上へ帰って行った。


この能は、世阿弥の他の作品と違って前シテとツレが実際に泉を見つけた人物になっています。
中入り後、神が登場して祝福の舞を舞う、という形はとっていますが、霊的な化身が現われて昔の物語を語るのではなく、実際に泉を見つけた親子がそのいわれや霊験を語るのが特徴となっています。
ちなみに、ここでいう「薬の水」はお酒のこと。「菊慈童」や「枕慈童」にも出てきますね。(笑)


(文責:とりあ)

[ 「養老」トップへ ] [ HOMEへ ]

能楽勉強会