今月の特集曲

「定家」にみる和歌
1.時雨の亭
  偽りのなき世なりせば神無月誰がまことより時雨れ初めけん
  藤原定家

  詞書「時雨知時 稼」『拾遺愚草』
  詞書「時雨知時といへる心を」『続後拾遺集』冬
  『都名所図会』巻四
   偽りのなき世なりせば神無月誰がまことより時雨れ初めけん
   定家。この歌を種にして謡曲を作したり。時雨亭もこれより出でたり。
   実あるにあらず。


2.庭も籬も
  里は荒れて人は古りにし宿なれや庭もまがきも秋の野らなる
  僧正遍照『古今集』秋上


3.心の奥の信夫山
  信夫山忍びて通ふ道もがな人の心の奥も見るべく
  『伊勢物語』十五段


4.玉の緒よ絶えねば絶えねながらへば忍ぶる事の弱るなる
  玉の緒よ絶えねば絶えねながらへば忍ぶる事の弱りもぞする
  式子内親王 題詠「忍恋(しのぶるこひ)」 『新古今集』恋一

  玉は魂、玉の緒は魂の緒で命。
  「私の命よ」と自らの命に強い調子で呼びかける上の句に対して、下の句は
  かそけく哀調を帯びている。
  定家の『百人一首』にもある新古今集時代の代表的な「女歌」。


5.昔はものを思はざりし…
  逢ひみての後の心にくらぶれば昔は物を思はざりけり
  藤原敦忠 『拾遺集』恋二


6.あはれ知れ霜より霜に朽ち果てて世々に古りにし山藍の袖の涙の身…
  あはれ知れ霜より霜に朽ち果てて世々に古りぬる山藍の袖
  藤原定家『拾遺愚草』

  昇官しない官人の思いを歌ったものを、永年の思い浅からぬことに転用した。
  禅竹(能作者)は『雲林院』にも用いる。


7.憂き恋せじと禊せし…
  恋せじと御手洗川にせし禊神はうけずぞなりにけらしも
  読み人知らず『古今集』恋一


8.色に出でけるぞ悲しき。
  忍ぶれど色に出でにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで
  平兼盛 『拾遺集』恋一


9.雲の通ひ路絶え果てて、少女の姿留め得ぬ…
  天つかぜ雲の通ひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめん
  良岑宗貞『古今集』雑上


10.げにや難くとも恋ふとも逢はん道やなき君葛城の峰の雲と…
  難くとも恋ふとも逢はん道やなき君葛城の峰の白雲
  藤原定家『拾遺愚草』


11.夢かとよ闇の現の宇津の山
  踏み分けし昔は夢かうつの山あととも見えぬつたの下道
  藤原雅経『続古今集』羇旅


おまけ  葛城の神姿 恥づかあしやよしなや
  岩橋の夜の契も絶えぬべし明くるわびしきかづらきの神
  春宮女蔵人左近『拾遺集』雑賀

  葛城の神は醜さを恥じて夜だけ姿をあらわしたとの伝説から



さてここで問題です。
『定家』の中にある和歌12首のうち、「百人一首」には何首あるでしょうか。


(文責:めぐ)

[ 「定家」トップへ] [ HOMEへ ]

能楽勉強会