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この能の主題は「恋」。 しかし、ただただ甘美で純粋で幻想的な恋ではない。 「人目を忍ぶ恋」である。それも浪漫的なものではなく、死後にも及ぶ執心と妄執の恋である。 だが、地獄模様とはならない。 それは、定家の式子内親王に対する恋心の根源に、皇女という高貴な身であり、かつ、賀茂斎院(後に出家?)という穢れなき身に対する純粋な憧れを秘しているからである。 一方の式子内親王も、恋の呪縛からの解放を願いつつも、恋の歓喜と享楽を拒絶しきれない自らの妄執に苦悩する姿にさえ、品格と誇りがあるからである。 そして、この能のもうひとつの主題は「老いの悲哀」。 後シテの面は、「霊女」(または泥眼・痩女)を用いる。苦悩する姿を強調しており、特異な演出である。 この苦悩の原因は、恋に関することよりも、老い衰えた醜い姿を恥じ、さらに恋していた頃の若さと美しさに執着する自らを恥じたことによるものである。 |
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現在地:京都市上京区今出川通千本 のあたり 『応仁記』 千本ニ両歓喜寺、此ノ寺ニ定家葛ノ墓アリ 『都名所図会』巻一 今出川通糸屋町の西にある般舟三昧院(はんじゅうさんまいいん)に式子内親王の塚が あり、定家葛の墳(つか)と呼ばれ とある。 (文責:めぐ) |