今月の特集曲

竜田明神について

竜田(奈良県生駒郡斑鳩町)は、上代から信貴山につづく有名な神の山、御室の山のあるところで、秋は紅葉の風景の美しさを愛でて、飛鳥・奈良・平安朝時代に、各地より参拝客・遊客・歌人が集まる場所でした。色付く竜田山や、竜田川に散り流れる紅葉の華麗さを詠んだ歌は、古今集・新古今集に多く載せられています。
竜田明神(奈良県生駒郡三郷町立野)は竜田大社とも呼び旧官幣大社です。第十代崇神天皇の創建といわれています。農業・航海業・航空業を守る風の神様で、風を鎮める風鎮祭が行われます。曲に謡われている「滝祭」は、生きた魚を竜田川(大和川)に放つ放生会です。

竜田明神について、曲の狂言は次のように謡っています。
竜田明神は、極楽浄土からこの国にやってきた神で、君を守り生きとし生けるもの総てがその神徳をうけ悦ぶ。また鶏を使者として、暁の声を立て、時を知らすもので、一切衆生の眠りを覚まし、本覚の道にいれさせ給う。紅葉を御神木とすること、神は紅色を好む故ということである。また当社は天の逆鉾の守護神で、この鉾の刃先は八つあり、紅葉も同じように八つに分かれた葉である。この事から紅葉の葉を神体として崇めるようになった。秋も末になると、竜田川に紅葉が散り浮き流れる姿は、さながら錦を織りたるごとくで、その頃になると、神慮を憚り、川を渡る人も無い。当社の竜田姫は秋を司る神でもある。

また、古老のつたえるところによると、昔この所に雷神が落ちて、あがる事がならず童子となった。これを農夫が育て子とした。折しも旱魃で、隣村には雨が降らなかったが、農夫の田上には、夕立が時々そそぎ、稲花成熟し秋の収穫が思いのままであった。その後この童子は小竜となって、天に昇った。これによりこの田を竜田と呼び、やがて所の地名となった。立田は当て字であるなどと伝えられています。

(文責 ヒロ☆)


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