今月の特集曲

「草子洗小町」あらすじ

大伴黒主は清涼殿における歌合せの会で、小野小町を相手に歌を競うこととなりましたが、非凡な小町には到底かなわないと思いました。そこで、前日、小野小町の私邸に忍び入り、小町の作る歌を盗み聞きします。小町には「水辺の草」という題が与えられていて、自邸で短冊に自作の和歌をしたためています。

まかなくに 何を種とて浮き草の 波のうねうね 生い茂るらん

さて翌日になると、清涼殿の御会には、歌聖柿本人麿・山辺赤人の影像をを懸け、天皇・小町・黒主・貫之らが左右に列席して勝負が始まりました。

紀貫之が「水辺の草」と題した小町の歌を詠み上げると黒主は古歌だといいます。驚いた小町は出典をただすと、万葉集だが作者不明と答えます。小町は万葉集七千首で知らぬ歌はない、もしや異本があるのかと訝ります。黒主は小町が古歌を盗んで勝とうとしたと言い張り、小町は黒主の悪巧みだと争います。
このとき、黒主は立ちあがり「この通り」と、前もって加筆しておいた万葉集の草子を示しました。帝の御前でかように辱められた小町は、無念やる方ありません。小町が草子を手にして見ると、墨の色が少し違い、どうも加筆したもののようです。
天皇の許しを得て、銀の盥(たらい)に御溝水を汲み、一同の面前で草子を洗ってみました。もとより加筆ですので、その歌は水に流れて一字も残らずに消え失せてしまいました。

嘘がばれた黒主は、これ程の恥辱はないと自害しようとしますが、帝も小町も歌人の熱心さからでた事といって許します。
小町も黒主も恨み争うことをやめ、小町に薄衣、風折烏帽子を着せ笏拍子を打って座敷を静め、小町は舞を舞って和歌の徳を称えるのでした。

(文責 ぴのこ)


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