今月の特集曲

潯陽の江のほとりで

高風が猩々の現れるのを待った潯陽の江とは、中国江西省北部の港町・九江あたりを流れる揚子江の異称です。(白楽天の詩『琵琶行』により有名です。)
九江は古来、お茶や陶磁器の輸出港として栄えた街。高風が酒を売っていたという揚子の市というのは、この九江の港付近の市ではないかと思われます。

高風はカネ金山の麓、揚子の里の民ということですが、揚子という地名はどうも存在しないようです。(揚子江を臨む里というような意味を込めて「揚子」を用いたのでしょうか?)「金山」も中国各地にある、ありきたりの山の名称なので、高風が具体的にどこに住んでいたのかの特定はむずかしいですね。(わざわざ「カネ金山」といっているのは、中国五山の一つ、「径山寺」(キンザンジ)との混同を避け、区別するためでしょうか。ちなみに径山寺は金山寺味噌の発祥地です。)

ところで、九江の南西には中国有数の景勝地で名高い仏教の聖地・盧山があります。
謡曲『三笑』の舞台でもあり、『半蔀』や『芭蕉』の詩句でもおなじみの山ですね。


使用する面・装束

面   猩々
     赤い彩色の顔、目元と口元に笑みをうかべています。
     『猩々』で使用する特殊な面です。

装束  赤頭、赤地唐織、緋大口(または赤地の半切)
     ようするに、足袋以外は赤一色です。

(文責:映)

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