今月の特集曲

 「石橋」の舞台
場所は中国、山西省の五台山である清涼山で、文殊菩薩の霊蹟として知られています。
そこへ出家して、寂昭上人と名乗った大江定基がやってきます。

大江定基が清涼山の麓で往生を遂げる際にしたためた辞世の詩があります。

「笙歌遥聴孤雲上 聖衆来迎落日前」

笙歌遥かに聴ゆ、孤雲の上
聖衆来迎す、落日の前

(笙に合わせた唱歌の声、一片の雲の上から遥かに届く極楽浄土の御仏たち、夕照の前に揃って、姿をお見せになる。)

ただし、『十訓抄』ではこの詩は慶滋保胤の作とも言われています。

(文責:麗華)
 「石橋」に使われる作り物・小道具

 「石橋」では舞台正面に一畳台を二つあるいは三つ並べ、そこに紅白の牡丹花ノ木を立てます。一畳台の置き方、牡丹の立て方など流儀や小書により様々で、「師資十二段之式」のように白頭の獅子の入った藁屋の作り物を笛座前に置くといった演出さえあります。牡丹は紅白のほかに桃色の牡丹も立てることがあるようです。また江戸時代の将軍主催の「石橋」では、牡丹は全部縮緬で作られ、演能後に獅子を演じた役者に下されたということです。

 ところで一畳台は玉座や寝台、宮殿、祭壇になったりと用途の広い据え道具といえます。檜材で作られた一畳ほどの大きさの台ですが、四隅に直径二寸(6cm)ほどの円い穴がありており、この穴に引立大宮の柱を入れたり、「石橋」の牡丹のように樹木を立てたりしています。さらに台掛といって金襴の縁が付いた布を覆いますが地色や模様には特に決まりがなく、演目にふさわしい品が選ばれ用いられます。装束との調和など鑑賞の際の楽しみになるかと思います。

(文責:映)

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