![]() |
謡曲「殺生石」では、 塚の神から幽王の后・褒似、そして玉藻の前へと転生していく不屈の狐として 登場いたしますが、 江戸時代、芝居のネタとなるころには この狐様、 白面金毛九尾の狐となって描かれております。 室町時代の草子、「たまものさうし」等では、それでも二尾の狐でしたから、 年々 派手になっていってますね。 江戸時代といえば有名なのは「三国悪狐伝」。 ここでは、 殷の紂王の寵姫・妲姫(だっき)から始まり、天竺、斑足太子の愛人華陽婦人、 そこからさらに周の幽王の后・褒似、そして日本の玉藻の前へと、行く先々でエライさんをたぶらかしておりますのです。 ちなみに、妲姫さんといえば「封神演義」でも有名な諸悪の権化。 「酒池肉林」とはこの姫さんの贅沢極まりない宴会からきている言葉ですから その我儘ぶりも想像に難くありません。 褒似さんは 笑わないお姫さん。幽王は彼女の笑顔見たさに、非常用烽火をあげてしまうのです。さて、これを見た近隣諸国の軍は一大事とばかりに駆け付ける。何もないと知って皆々がとまどう。その様子を見た褒似さん、笑う。 こりゃあかんでしょ。何度も繰り返した挙句に、本当に攻め込まれた時には、 もう誰も助けになんか来てくれません。そして滅んでしまいました、という 「狼少年」的オチなのですが、そこが褒似さんの作戦だったのでしょうか。 それにしても、大陸ではえらいご活躍であった玉藻さん。 日本では、帝の寵姫になるとこまでは良かったが 安倍晴明の子孫にすぐに正体を見破られちゃうし、石に姿を変えて、待ちの状態なんて、なんだかおとなしめです。 やはり、日本ではスケールが小さい!? なんで、あんなに簡単に改心して成仏しちゃうんだろう。 もうちょっと、殿方をたぶらかす可愛い子狐ちゃんの活躍を見てみたかったなあ。 (文責 くり) |