今月の特集曲

「西王母」の舞台
もともとこの曲は『唐物語』の中の西王母伝説がベースになっています。
で、今回は西王母という神さまについて、みていこうと思います。

西王母は、崑崙山に住んでいる美しい大仙女で、崑崙玄圃にある宮殿(瑶池ともいいます)に住んでいます。ここには蟠桃園という園があり、何万本もの仙桃の木が植えられています。
この桃が珍しい桃で、3千年に1度しか実をつけない、というもの。王母桃、蟠桃などといわれるそうです。
そのため、実をつけたらこれはめでたいっ!ということで、宴会が行われたとか。(蟠桃会)
桃は邪気を払う仙果として古くから重んじられ、五気五行の精と信じられてきました。仙境や天界境を「桃源」と言うのはここから来ています。

また西王母は1羽の鳥を使役していますが、この鳥は3本足だと伝えられています。
霊薬や仙薬を多く所有しており、不死の薬を与えた話があります。
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ゲイという男が、西王母の許を訪ね、不死の薬を貰い受けることに成功しました。
ところが、ゲイの妻の蟐蛾(コウガ)が、その薬をこっそりと飲んでしまいました。夫であるゲイの怒りを恐れた蟐蛾は、天に昇って月に身を隠し、月の表面に見える模様はその姿だといわれています。

別の話では、不死を望んだゲイとその妻の蟐蛾に不死の仙薬を西王母が与えたというのもありますし、蟐蛾は西王母から不老不死の薬を盗み、月へ逃げたともいわれています。
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月へ逃げた、というのは、もともと西王母が「夕陽の女神」や「月の女神」として認識されていたからでしょうね。

また中国では七夕伝説にこの西王母が出てくることもあって、祇園祭や小牧秋葉祭、大津祭などに山車があります。和歌の家、冷泉家には西王母人形があるらしいです。


(文責:とりあ)

装束・作り物・小書について
面・装束・小道具

 前シテ:増・摺箔(着付)、紅入唐織・桃枝

    唐織りとは主に女役の上着として用いられるもの。
    元々は中国(唐)風の織物を意味し、金銀様々な色糸で文様を浮織に。
    豪華な小袖です。

 後シテ:増・摺箔(着付)、緋大口(袴)、舞衣あるいは長絹、
      天冠鳳凰戴、飾太刀、鬘扇

    舞衣と長絹はともに舞を舞う時の装束です。
    舞衣は女役のみが使用。
    前後の見頃は縫い合わされており、意匠は総文様。
    長絹は女役が主に用いますが、役柄により男役でも用いられます。
    広袖で、前後の見頃の縫い合わせはなし。
    絽や紗地に文様が織られている(枝垂れ文様が多いです)。
    長絹の両胸と両袖には組紐がついていて露とよばれています。

    天冠とは金属製の輪の形の冠。天人や女神、官女であることを表現します。

 「西王母」は上演されることが少ないですが、登場人物が多く(前・後ツレ、ワキツレあり)、小道具もはなやかなよう(後ツレは手に捧げものの桃実盆を持ちます)です。
 松井先生の「西王母」、とても楽しみですね。

作り物

 引立大宮
    一畳台の四隅に柱を立て、屋根をのせたものを引立大宮といいます。
    屋根のひさしには色のついた布を千鳥掛けにかざります。
    (ちなみに1m弱の角台に柱を立て、屋根をつけたものは小宮といいます)

(文責:映)

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