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酒呑童子の説話は、古く大江山絵詞や御伽草子の酒呑童子などにあるが、御伽草子は謡曲とどちらが先に出来たか不明であるので、おそらく大江山絵詞などに取材したものであろう。 |
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切能・働物の中でも劇的な構成を持つ物の一つである。 筋は頼光武勇伝の一つで、大江山の鬼退治であるが、主人公である鬼が、いかにも人間的な一面を持っていて、単なる鬼退治に終始しない点に魅力がある。 討手の面々は50余人の大勢で、しかも山伏の姿に身をやつし、酒呑童子の棲家に宿を借り、隠れ家を発見されて「通力を失うばかり」に驚いた童子を慰めて、堅い誓約をし、厚いもてなしを受けたにも拘らず、酔い臥した童子を襲ってその首を打ち落とすのであるから同情は負かされた者の方へ集まる。 後場では、客層の不誠意に憤慨した童子がそれを責めると、討手の1人が、それを反駁して、王地に住んで人を取り、世の妨げをしたではないかという。しかし、童子の悪行に対する非難はその一句だけで、却って童子の愛すべき人間らしさのみが強調される。討たれるときも、「鬼神に横道なし」といい、「情けなしよと客僧達、偽りあらじと言いつるに」と愚痴をこぼす程度で、鬼神といった怖さより、童子の可憐な感じを最後まで残している愛すべき人間的な鬼に感じられる。 (文責:ヒロ☆) |