今月の特集曲

熊野本宮の巫女だから神楽を舞う?

熊野大社の巫女は「イタ」と呼ばれた。
イタは夢の中で、熊野権現の託宣を受け、それを読み解き、歌にして人々に告げたらしい。

謡曲「巻絹」が生まれた頃は、伊勢や出雲など、巫女が神懸りになり、お祓いなどをすることは、多分今よりもっと自然なことで、巫女の神性も真実味を持って信じられたであろうと思われる。
イタも、神霊が憑く存在の一つとして広く知られていたゆえ、謡曲「巻絹」が成立したし、また巫女(人間)であるシテが神楽を舞う唯一の曲ともなりえたのであろうと思う。

従って、使用される面も人間の女のものではなく、「十寸髪」というエネルギッシュな女神の面とされるのであろう。


それにしても、?年前、初めて先輩のお仕舞の地謡を謡った時から、献上物がなんで巻絹なん?って、ちょっと不思議だった私ですが、今回ちょっと意識して「巻絹」を見直してみて感じたことは、熊野の山の緑に絹の穢れない白がよく映えるなあと思いました。
そしてその白は、熊野本宮一帯にある「神聖な気」というか、「神々の息吹」とでも言うべき気配を象徴しているのではないか…と。
勝手にあれこれ考えて、あー楽しかった。長らく拙稿にお付き合い頂きまして、ありがとうございました。



(文責:雲井カルガモ)

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