今月の特集曲

あらすじ
 五番目物
 季節:3月
 作者:観世信光
 前シテ:老翁
 後シテ:鍾馗
 子方:楊貴妃
 後ツレ:病鬼
 ワキ:玄宗皇帝
 ワキツレ:廷臣

 玄宗皇帝が病に倒れた楊貴妃のことを心配していたところへ宮殿の階の下から1人の老翁が現れ、声をかけてきました。
 老翁は「唐の高祖の時代に進士に落第したことを嘆き、この階で頭を打ち砕いて自殺した鍾馗の霊です。」と名乗りました。そして「死後に官を賜った御恩に報いるため、貴妃の病を平癒させたいと存じます。明王鏡を貴妃の枕頭へ立て置いてください。」と言って消え失せました。
 玄宗皇帝は貴妃を見舞い、力づけた後、老翁に言われた通りに明王鏡を枕頭に置きます。するとその鏡に病鬼が映し出され、玄宗皇帝の前に現れます。玄宗皇帝は件を抜いて病鬼に立ち向かいますが、病鬼は柱の影にすばやく隠れてしまいました。
 その時、宮殿が鳴動し、先ほどの鍾馗の霊が馬に乗って虚空を翔って参内し、明王鏡に映る病鬼を退治したのでした。
 そうして貴妃の病は平癒し、鍾馗の霊は玄宗皇帝の守り神になることを約束して、虚空へと帰っていきました。

みどころ

 同じ鍾馗をシテとする「鍾馗」では、シテが悪鬼を退治する様子を表すが、ツレの悪鬼は登場せず、作り物も出てこない。
 それに対して、この曲は登場人物も多く、一畳台2つに宮の作り物、鏡台と多くの作り物が出てくるため、場面転換に富み、作者の観世信光の作風の特色がよく出ているといえる。


(文責:とりあ)

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