今月の特集曲

「小鍛治」の内容
経済面
 〜当世派遣社員もよう in謡曲『小鍛冶』〜


 社員の派遣契約は、人件費抑制を目的とする容易で一般的な業務に関するものが主であったが、近頃は少し様変わりしているようである。

 当代の名匠三条小鍛冶宗近氏の場合

 宗近氏によると、今上天皇(一条帝)より、橘道成氏を勅使とした宣旨(今上帝の夢見に基づく御剣作成の命)を下され、了承したが、相槌不在のために作成に不備を生じたので、氏神に当たる稲荷明神に対し、奇特を下されるよう要請したそうである。
 一方、同要請を受諾した同明神によると、童子姿となって、同宗近氏に草薙剣に代表される銘剣の威徳・故事を述べた上で、御剣を完成させることができるように神通力を貸与する旨の契約を成立させた後、稲荷山へ帰社した。後日、同明神は、同宗近氏が注連縄内にて祝詞をあげ、待機しているのを確認したため、前記契約を履行すべく小狐を相槌として派遣した。
 同宗近氏と小狐は、御剣を完成させ、勅使に無事御剣を捧げることができたので、以って契約を終了し、小狐を帰社させた、とのことである。

 社員の派遣契約は、この場合のように、短期間であっても高度な専門性と特殊性を持った業務内容に関しても対応でき得るようになってきている。

(文責:めぐ)

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