今月の特集曲

「清経」の舞台
能「清経」は京の清経邸で繰り広げられる夫婦の物語です。

死んでも現世への思いが強く、そして残された者の思いが強いと成仏せずにこの世に残ってしまうのだそうです。
清経と清経の妻も思いが強いと言えるでしょう。
最初はお互いに恨み言を言い合いますが、一夜のこととはいえ淡々としつつも、それでいて修羅道のところは激しく語られていて面白い展開になっています。

(文責:麗華)

「清経」に使われる小道具について
 修羅能のうち「屋島」「箙」「田村」の三番を勝修羅、ほか「清経」などを負修羅と呼び、それぞれが持つ扇は勝修羅扇、負修羅扇と区別されています。

 勝修羅扇は金箔の地の上に紺色の霞文がほどこされ、強い緑色の苔むした雄大な老松と紅色の旭日が描かれています。勝ち戦にふさわしい日の出の勢いが表現されています。また、鎌倉時代の軍扇の趣も感じられます。

 一方、負修羅扇の代表的図柄は「波濤と入り日」です。負修羅扇の大半は平家の公達を主人公としています。まさに平家物語の扇の的の一件、「紅の扇の(〜略〜)夕日の輝くに、白波の上に漂い、浮きつ沈みつゆられける」を思いだされるものです。

 表に「老松と日の出」、裏に「波濤と入り日」を描いて、勝ち負け両方にも使用可能な扇は江戸時代中末期になって制作されるようになりました。また、負修羅扇は竜神・鬼女あるいは閻魔王などの鬼神にも使われるようです。

(文責:映)

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