今月の特集曲

「邯鄲」のみどころ
 型の一つ、人物の一声にて、一瞬にして場面が展開し、そして、次々に移り行く。一畳台は、場面に合わせ宿の寝台になり、宮殿になり、玉座にもなる。シテ以外は、切戸口より下がり、順次去っていく。

 「邯鄲」のみどころは、能楽では特異なリアリティーと鮮やかな場面展開にあり、更に、作り物の応用にもある。シテが一畳台で舞う《楽》も味わいがある。


「邯鄲」の解説
 満開の桜が、一夜の嵐で散り去る如くに、この曲の場面展開は鮮やかであり、各々の場面で用いられる見立ては、中国の話を 題材にしているにもかかわらず、そして、能楽特有の幽玄美や具現性を削り去った抽象性とは一線を隔するにもかかわらず、紛れも無く日本古来の美意識や精神性に裏打ちされている。

 即ち、気象条件により、目に見える風景は一変することに違和感無く親しみ、或いは、小さきもの、狭きものにも、宇宙に至るまでの大きさ、広さを思い描くことの出来る美意識であり、常に移り行く季節の中や宗教に基づく精神の中で育まれた無常観さえも見ることが出来る。


(文責:めぐ)

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