今月の特集曲

「賀茂」ストーリー

(前半)

夏の夕刻、京都・賀茂神社。神前の御手洗川の川風・川音は涼しく、夏の暑さを忘れさせる。川のほとりには新しく土を盛り上げた祭壇が作られており、白い幣に白羽の矢が立ててある。

播州・室の賀茂神社から参詣にやってきた神職(ワキ)と従者(ワキツレ)。
白羽の矢を見た神職はそのいわれが知りたくて、水桶を手にしたお参りらしい二人の女性(前シテ、前ツレ)に声をかけて聞いてみることにした。

「この御矢はとてもありがたいものなのですよ」女はそう言って、

昔、秦の氏女という人があり、朝夕、この川の水を汲み、神に手向けていたこと。
あるとき、川上から一本の白羽の矢が流れてきたので、持ち帰り、家の軒に差したところ、氏女は懐妊して男の子を産んだこと。
その子が三歳のとき、人々の集まった席で、父は誰かと尋ねたら、その矢を指した。
すると、矢はそのまま雷となって天上し、神になったこと。

など、説明して、「別雷の神とは、その子のことです」と教えてくれました。
一緒にいた女はさらに「その子の母君である氏女も御祖の神となった」と付け加えました。

二人の女があまりに詳しいので、神職は名を尋ねましたが、名を明かしてはくれません。しかし、とにかく高貴な神であると言って、白い幣の陰にまぎれて姿が見えなくなってしまいました。

(ここで中入)

末社の神(アイ)がやってきて、賀茂明神のいわれを語りだします。そして神が登場するまでの間、神職たちを慰めようと「三段ノ舞」を舞って、また帰っていってしまいました。

(後半)

しばらくすると、御祖の神(後ツレ)が天女の姿で現れ、「天女ノ舞」を舞いました。
賀茂の山なみが御手洗川に映り、山も水も天女の袖も緑色に染まり美しい。

その時、山河草木が揺れ動いて、別雷の神(後シテ)がご出現になった!
「私は都を守り、君臣の道を重んじて、その別を明らかにする別雷の神である」
こう、おっしゃると「舞働」を舞われた。
そして、国土を守護することを述べて、御祖の神が糺の森に帰られるのを見送った後、雲霧をわけて天上の住まいへとお帰りになったのでした。

(文責 映)


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