今月の特集曲

 「杜若」の舞台
『杜若』ってどこのお話?

三河国八橋(現愛知県知立市知立町八橋)である。
同地の無量寿寺には「八橋旧跡」があり、今なお3万本の杜若が境内を彩っている。
昔は、東海道五十三次の宿場町のひとつで、現在も国道1号線、JR東海道本線、東海道新幹線、名鉄名古屋本線、名鉄三河線等が通り、交通の要所である。

(文責:めぐ)


 「杜若」のなぜ?
後シテが堂々と「まことはわれは杜若の精なり」と名乗っているのに、『隣忠秘抄』云わく、「幽玄の能なり、五番目の能(そう、シテが人間でない)なれども太鼓の序之舞の能ゆえ三番目にもする」と『梅』・『藤』・『西行桜』・『遊行柳』どころではなく、三番目っぽい能である。

なぜなら『杜若』は、『伊勢物語』九(東下り)を基に『冷泉家流伊勢物語抄』の解釈にそって作られた曲目であるので、元々の題材のテーマが恋で、妖しいのである。

しかも、その後シテは里の女の本性である杜若の精であるにもかかわらず、歌舞の菩薩イコールの在原業平になったり、恋人の二条の后高子になったり、と忙しいシテになっている。
そう、後シテは女でも男でも、人間でも、精でもないのである。

尤も、世阿弥の複式夢幻能形式が確立される以前の試行錯誤状態の中で、中入無一場物(物着有)の何でも変身の後シテの出現となったのである。

(文責:めぐ)

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