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月影澄み渡る秋の夜、今となれば、忘れ去られてしまった古の都大和国石上の古寺の一叢薄を背に、有常の娘の幼馴染業平との初恋の頃から、結ばれ、波乱の時を経、安寧に至るまでの女の一生を描ききっている。そして、ついには、亡婦魄霊となってしまう。 有常の娘の純粋で直向な業平への恋と秋の寂寥感が溶け合い、清らかで静かな女一代の恋物語を紡いでゆく。 |
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室町代末期の一時期、『井筒』は、「十寸髪」の面を掛け、「カケリ」を舞った演出があった。 従順でたおやかな女の内にも、嫉妬の怨念・悲しみ、ひたすら待ち続け、その人の形見にさえ縋らざるを得なかった情念を表そうとしたのであろうか。 (文責:めぐ) |