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古に、在原業平と紀有常の娘が住まいし、今では古寺となってしまった在原寺を旅 の僧が訪づれ、業平夫妻を弔っていると、女が現れ、業平の塚に花水を手向け、弔 い、そして、昔語りを始めた。 その物語は、更に、昔へと遡り、業平と有常の娘が、井筒で水鏡をして遊んだ幼い 日々、和歌を詠み交わし結ばれた若い日々へと続いていった。 そして、その女は、「有常の娘である。」と名乗り、井筒の陰へと姿を隠した。 (中入) その旅僧は、改めて、この辺りの人から、業平と有常の娘との物語を聞き、夢の中 へと入っていった。 秋の月夜、業平の形見の直衣を身に纏った有常の娘の亡霊が現れ、業平を偲びつつ 舞う。井筒に姿を映し、業平の面影を懐かしみつつ、夜明けと共に消えていった。 旅僧の夢は醒めてしまう。 (文責:めぐ) |