今月の特集曲

一角仙人の素材

謡曲「一角仙人」の素材は、直接的には『太平記』巻37の「一角仙人の事」によるが、一角選任の伝説は遠く『大智度論』巻17、『法苑珠林』巻71「五欲部呵欲部」、『経津異相』巻39などの仏典に見られる。
日本においても、『太平記』のほかに、『今昔物語』巻5−4、『宝物集』巻5、『三国伝記』巻2−28、『法華経直談鈔』巻3末−29、『和歌童蒙抄』巻3、『六巻抄』巻2などにも同様の話が見られる。


『太平記』にみる「一角仙人」

一角仙人、出生の秘密の段

路上をトイレとして使用中の仙人が、ラブラブ状態の鹿たちを目撃したものだから、すっかり気分が高揚してしまい、ついそそうをしてしまった。
が、その下に生えていた草の葉っぱを、あろうことか牝鹿が食べてしまった。
この大食漢の牝鹿が無事出産し、誕生したのはよいが、額にひとつの角がある人であった。名づけて一角仙人さんであった。

超自己中な一角仙人の段

一応まじめに修行したものだから、強力な神通力を得た一角仙人。
とある日、山道で雨にあい、派手に滑って大転びしてしまった。
超ワガママな一角仙人は「龍がいるから雨が降るんだ!」と逆恨みして、国中の龍達を監禁してしまった。

さあ困った、世間の算段の段

旱魃で食糧危機。焦った帝とお利口な臣下は、「美女誘惑作戦」に出た。
旋陀女という宮中第一の美女を頭に500人もの美女軍団を一角仙人の草庵へ送り込んだのである。
色事に弱いDNAを持つ一角仙人はすっかり籠絡されてしまい、せっかくの神通力も喪失し、挙句の果てに病死してしまった。

龍たちの解放の段

おかげで国中の大龍、小龍の諸龍たちは、無事解放されて、天に飛び、水中に沈み、雲を呼び、雨を降らせた。
季節どおりの風雨に恵まれたから、国中の民は農耕に励むことができた。

(文責:めぐ)

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