今月の特集曲

あらすじ

 その昔、越前の国味眞野に男大迹(をおあとべ)という皇子がおられた。
 この皇子は、第15代応神天皇の5世の子孫にあたる方であった。
 この程、大和の第25代武烈天皇が崩じられたが、世継ぎがない。よって人格聖賢な皇子に、次の帝の白羽の矢が立てられ、都に迎えられることになった。

 さて、皇子には寵愛する妃があった。名を照日の前という。
 しかし、都に伴う訳にもいかず、再会の機を待つ心を文に託し、花筐とともに寵妃に遺して皇子は大和へと向かわれた。
 その後、皇子は継体天皇となられ、大和の玉穂の都に宮を構えられた。

 照日の前は、帝を慕うあまり心を乱し、侍女と共に大和を目指して旅に出た。狂女とそしられ、道を教えてくれる者もない旅をして、照日の前は玉穂の都に辿りつく。帝からいただいた大切な文と花筐を抱きしめて。
 やがて紅葉の御幸をなさっている帝一行に行き逢う。官人に見苦しき者ととがめられ、大切な花筐をはらい落とされる照日の前。今は帝となられた恋人の権威に圧倒されつつも、気高く身の上を話し、請われて反魂香の故事を語りながら狂ってみせる。
 帝はその様子をご覧になり、狂女が照日の前であることを喜び、御幸に伴い宮へ誘うのであった。めでたし、めでたし。というおはなし。

(文責 雲井カルガモ)

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