今月の特集曲

あらすじ

私は九州から都見物に来た僧です。
須磨の浦の生田川までたどりついた時、川のほとりに色あざやかに咲いている梅がありました。眺めていたところへ里の男が通りかかったので、梅の名前やその由来を聞いたところ、源平の合戦の際、源氏方の梶原源太景季が梅を箙にさして笠印とし、功名を立てたことから“箙の梅”と名づけられた、と言い、さらに一の谷の合戦の様子を詳しく語りました。
あまりにも詳しく語るので不思議だな、と思っていたら、その男は景季の亡霊だと名乗って、梅の木陰に消えてしまいました。
その夜、私の前に箙に一枝の梅をさした若武者姿の景季が現れ、修羅道での苦患や合戦での戦いぶりを見せた後、夜明けとともに回向を頼んで姿を消しました。


この曲の作者は世阿弥。
景季のさわやかな若武者ぶりと梅の花の凛とした美しさを重ね合わせる一方、修羅道の苦しみと梅に心を寄せる風流の心の対比で哀愁を表現している。
また「勝修羅」の一つでもある。
修羅物の曲は、武将の霊が、生前、戦いに明け暮れた罪により、死後は修羅場に落ちて苦しむ、という仏教の考え方に基づいている。修羅道での苦患は「カケリ」を舞うことで表現する。この曲では、所作や囃子の急激なテンポの変化で効果的に表現しているといえる。

(文責:とりあ)

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