今月の特集曲


 「道成寺」の舞台

 能「道成寺」の舞台は、和歌山県日高郡川辺町の道成寺で、文武天皇の勅願によって紀道成が奉行して建立した千手千眼観世音菩薩の霊場です。

 今は国宝の本堂(本尊は義淵作の千手観音)仁王門、三重塔、護摩堂のみですが、この曲にゆかりのものは入相桜、安珍・清姫の像、土佐光重筆の絵巻「鐘撞き物語」、安珍の墓、再建するとたたりがあるという鐘楼の跡、大蛇になった清姫が身を隠した所という「蛇塚」等があります。

 「道成寺縁起」によると、醍醐天皇の御代に奥州から熊野詣でにやってきた僧に恋慕した人妻が、逃げる僧を追って大蛇となり、道成寺の鐘の中に隠れた僧を焼き殺すが、道成寺の僧達の供養によって両人共昇天して天人になったとされています。

(文責:麗華)


 「道成寺」の装束

 装束については、鱗文様の摺箔を着て唐織に縫箔を壷折りにし、頭には烏帽子をかぶっていますが、鐘の中で肩脱ぎにして登場します。

 扇は鬼扇を使います。観世流では赤地に牡丹の花一輪が描かれていますが、牡丹は花妖といって鬼神の好む花とも言われています。

(文責:麗華)


 「道成寺」に使われる作り物・小道具

鐘の絵 今回の特集曲「道成寺」に用いられる作り物の「鐘」についてまとめます。

 本来は人が入るものではない「鐘」ですが、この曲ではシテがその内に入り、一人で装束を変えるものですから、作り物の中でも最も大がかりなものとなっています。

 竹を骨組に鐘の形が作られ、外側を紺地の緞子幕でおおっています。縁には重さをつける為、鉛が入れられ、その重さ4〜50貫といいますから約150キログラム(15キロが4貫)ということになります。また、鐘の内側には金属の鏡が装着され、後シテの面や道具なども入れておけるようになっているそうです。

(文責:映)

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