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能面−泥眼の胸の内 泥とは、目に入れたる金泥の泥。鬼の金。 四角い瞳は、悟りとはほど遠い心の表れ。 いつの間に、我が姿は、このようになってしまったのか。もとは菩薩の面だったとか。けれど今の私には、どうということもない。 自分でも、高貴な女の心の内にある激しい感情を押さえ込もうとする哀しい気持ちは、自分にしか表すことはできまいと思う。誰か、早く気付いて。こんなにつのる思いを、こんなに強い思いを。何とかして。これは、とても美しい、とても貴い気もちだと、私は思う。けれど、私はもてあましている。どうしたらよいのか分からない。自分の知らない私がいる・・・・・そう、時には般若の姿。私は卑しいことはできない。そうであるはず。 ああ、苦しい。苦しい。私には、六条御息所の気もちが、よく分かる。救えるものなら、救ってあげたかった。 (小梅) |